国家主権意識の回復と日米同盟の広義解釈のすすめ

 最近、台湾有事の危機が叫ばれ、それへの対処方が様々議論されているが、温度差はあるものの日本がコミットするのは当然といった風潮が広がっているように思われる。

 「台湾有事は日本有事。」「集団的自衛権の限定的行使もあり得る。」「敵基地攻撃能力を保有すべき。」といったタカ派の政治家たちの声に眉をひそめるハト派の中にも後方支援などを行なうのはやむを得ないと考える人々が少なくないのではないだろうか。

 周辺事態法成立の際には米軍への後方〔地域〕支援をめぐって、安全保障関連法(戦争関連法)の成立の時には集団的自衛権の行使をめぐって、違憲か合憲かの論戦が激しく交わされたが、これらの白熱の議論は肝心要の問題をカムフラージュしてしまったのかもしれない。

 かつて民主党の大物政治家が訪米した際に、台湾有事が発生した場合、日本は軍事的にコミットすべきでないが、〔自分が政権担当者ならば〕米軍の日本からの出撃は阻止しない、という趣旨のことを米国の識者に語ったことがある。コミットメントとは何か? この錯乱は彼一人のものなのか?

 周辺有事の際に米軍が在日基地から出撃することは、日本にとって何を意味するのか? 日本中が曖昧模糊とした雰囲気に包まれているのではないだろうか。

 

 戦争とは違う。

 多分違うと思う。

 違うんじゃないかな。

 まっ、ちょっとは覚悟しておこう。

 

 「関白宣言」の浮気の話じゃあるまいし、答えはあまりにも明瞭である。

 戦争そのものです!!

 戦備を整えた外国の軍隊が国内から出撃して第三国と戦闘を交えれば、出撃を許した国も中立国の資格を失い参戦国となる、というのが国際法的現実である。米国とまったく同じ立場となるのである。これは、陸戦・海戦・空戦を通じてそれぞれの中立法規に規定されていることで、自衛隊の動き如何とまったく係わりがない。字面ではわかっていても感覚的にピンとこない人が少なくないのではないだろうか。自国国土に対する主権意識が甚だしく衰弱している、と言わざるを得ない。

 しかも、日本が参加することになる戦争では、朝鮮半島にせよ台湾海峡にせよ、米国の仮想敵国から見れば、日本は敵側の非核保有国(あるいは地域)の中で民族的共通性を持たない唯一の国なのである。